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AKB48の仕掛け人・秋元康と日本アイドル・ポップスのヒット・クリエーター(作詞家・作曲家)の系譜②70年代編 [アイドル]

60年代半ば過ぎにビートルズの世界的人気を受けて日本で巻き起こったGS(グループ・サウンズ)の大ブームにより、レコード業界は従来の作詞家・作曲家の専属制度に捉われず、若く新しい感覚のクリエーターを求めるようになる。
この時期に作詞家デビューをした人たちの中に、当時、広告代理店でコピーライターをしながら放送作家として数々の番組の構成を担当していた阿久悠がいた。
70年代のアイドル界・歌謡界を牽引した阿久悠こそ、80年代にアイドルの仕掛け人として登場する秋元康に最も大きな影響を与えた人物であることは間違いないだろう。
阿久と同時代の作詞家との違いを一言で言えば、プロデューサー性の有無である。
阿久は71年に日本テレビでスタートしたオーディション番組「スター誕生!」に監修と審査員という立場で関わることで、番組で発掘した新人たちのデビュー曲の大半の作詞を手掛けた。
同番組出身者たちを《スタ誕組》という枠で捉えるならば、当時の阿久のスタンスは、のちのおニャン子クラブにおける秋元のそれに極めて近かったと言える。
レコード会社のディレクターからの依頼を待つという受身の立場ではなく、《スタ誕組》のトータル・プロデューサー的な立場でレコード会社や芸能プロダクションやテレビ局側と関わり、テレビというメディアの連続性やドキュメント性を最大限に活かして、つい応援したくなるという視聴者の心理を掴んでみせたのだ。
また、作曲家の都倉俊一、三木たかし、中村泰士、森田公一といった審査員の選定にも監修者の立場で関わりつつ、新人の個性や方向性によって各々とコンビを組み分けている。
扱う歌手の従来のイメージとは真逆のキャラを与えて繰り広げる非日常性のエンターテイメント路線で度々世間を驚かせたが、こうした仕事は決まって都倉俊一とのコンビで行われた。
《スタ誕組》以外では、カマトトチックな「こまっちゃうナ」以来ヒットのなかった山本リンダにアラビアンナイトのイメージで書いた「どうにもとまらない」「狂わせたいの」「じんじんさせて」「狙いうち」を次々にヒットさせ、ベイビー・ブラザーズとしてデビューしたものの全く売れなかったというフィンガー5にはアメリカの学園ドラマに出てくるマセガキの世界をテーマにした「個人授業」を提供してブームを作った。
そして、《スタ誕組》では番組の決勝大会で色違いのサロペットパンツ姿でフォークソングを歌った静岡出身の垢抜けない女性デュオ(のちのピンク・レディー。グループ名は都倉が命名)にデビュー曲として提供した「ペッパー警部」が世間に大きなインパクトを与えて以降、続く「S・O・S」「カルメン'77」「渚のシンドバッド」「ウォンテッド (指名手配)」「UFO」「サウスポー」「モンスター」「透明人間」「カメレオン・アーミー」も大ヒットに次ぐ大ヒットで、ピンク・レディーなしには夜も日も明けないほどの一大ブームを巻き起こしている。
阿久はスタ誕関係のアイドル以外でも、尾崎紀世彦の「また逢う日まで」、ペドロ&カプリシャスの「ジョニィへの伝言」「五番街のマリーへ」、堺正章の「街の灯り」、和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」、沢田研二の「時の過ぎゆくままに」「勝手にしやがれ」「カサブランカ・ダンディ」、西田敏行の「もしもピアノが弾けたなら」、小林旭の「熱き心に」といった数多くの名曲を生み出したほか、その仕事領域は都はるみの「北の宿から」、石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」、八代亜紀の「舟唄」「雨の慕情」などの演歌にまで及ぶ。このあたりも、アイドル以外に美空ひばりの「川の流れのように」を手掛けた秋元との共通点と言えるかもしれない。
 
70年代はアイドル歌手という概念が成立すると共に一挙に黄金期を迎えた時代であり、作詞家も作曲家も多士済々な面々がヒット・チャートを賑わせた。
中でも、質量ともに作詞家としてのトップが阿久悠だったことは間違いないが、作曲家では都倉俊一と筒美京平が2大トップとして君臨する格好となった。
60年代後半からオックスの「スワンの涙」「ダンシング・セブンティーン」、いしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」などをヒットさせていた筒美は、70年代に入ると、平山三紀「真夏の出来事」、南沙織「17才」、麻丘めぐみ「芽ばえ」「女の子なんだもん」「わたしの彼は左きき」「アルプスの少女」、浅田美代子「赤い風船」、浅野ゆう子「セクシー・バスストップ」、石野真子「日曜日はストレンジャー」「プリティー・プリティー」、岩崎宏美「ロマンス」「シンデレラ・ハネムーン」、太田裕美「木綿のハンカチーフ」、桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」、郷ひろみ「男の子女の子」「裸のビーナス」「花とみつばち」「よろしく哀愁」「恋の弱味」、桜田淳子「リップスティック」、ジュディ・オング「魅せられて」、庄野真代「飛んでイスタンブール」、豊川誕「汚れなき悪戯」、中原理恵「東京ららばい」、野口五郎「青いリンゴ」、リンリン・ランラン「恋のインディアン人形」などヒットを量産し、アイドル歌謡の成立に貢献している。

続きます。
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