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本田美奈子.さんはホントに凄い芸人だったねー。 [アイドル]

 こないだの日曜にテレ朝の「題名のない音楽会21」の本田美奈子.さんの追悼特集を見て、彼女の芸の凄さにぶっ飛んだ。
 この番組の今年の1月放送分だかに出たのが本田さんにとって最後のテレビ出演になったそうだが、その時にオーケストラをバックにして自らの20数年の歌手生活を集約したような3曲をメドレーで歌った10分前後のステージの様子が追悼特集としてノーカットで流されたのだ。
 いや、このメドレーが凄かったの何の!
 まず、1曲めはアイドル時代の代表曲「1986年のマリリン」のオーケストラ・アレンジ版。
 2曲めが、15000人のオーディションを勝ちぬいてキム役を獲得し、ミュージカル女優に転身するキッカケとなった「ミス・サイゴン」の劇中歌「命をあげよう」。ドラマチックに徐々に盛り上がっていく曲を本田さんはミュージカル風の唱法で朗々と堂々と歌いこなしてみせた。この時点でもうスタンディング・オーベイションものでしょ。
 そして3曲めは歌劇「トゥーランドット」よりプッチーニ作曲の「誰も寝てはならぬ」。クラシックを本格的に歌うようになってからのレパートリーであるこの曲を、透き通るようなソプラノで歌ってみせる本田さん。ミュージカルの舞台でいろいろな歌を歌っていくうちに、ソプラノで歌えるようになっていったんだってね。 
 3曲を全く異なった唱法で歌いきっちゃうんだもん。お見事としかいいようがない。こんなことが出来たのは本田さんだけなんじゃないかね。
 これが最後のテレビ出演だったというのも本田さんらしくて実にカッコイイねえ。
 凄い芸人だよ。
 思えば、本田さんがデビューした80年代半ばの女性アイドルの世界は基本的に歌のうまくない普通の女子高生たちを集めた「おニャン子クラブ」が大全盛期だったから、本田さんの歌唱力はその頃からひときわ目立ってたね。
 アイドル=偶像だから、必ずしもアイドル歌手が歌がうまくなくちゃならないってこともないんだけどね。その分、ルックスを含めた個性や魅力でカバーすれば、まあ、いいワケだ。
 でも、80年代までのアイドルはその個性や魅力を受け手に伝えるための第1手段として歌を歌い、レコードを出すということは避けて通れなかったんだよね。送り手側にとっては、レコードの売上げがビジネスの中心だったろうし。
 80年代の後半からアイドルとしてレコードの売れなかった井森美幸、山瀬まみ、松本明子、森口博子がバラエティー番組で活躍し始めて、バラドルというジャンルが確立する。 
 同じ頃、イエローキャブ第1号タレントの故・堀江しのぶはヒット曲はなかったものの巨乳を武器に水着写真集を何冊もヒットさせ、元祖グラビアアイドルとして活躍し始めていた。
 中山美穂や小泉今日子は女優業やCM出演に活動の軸足を移していった。
 90年代以降は女性アイドルが細分化して、宮沢りえ、牧瀬里穂、広末涼子らはアイドル的な女優として活躍し、安室奈美恵、SPEED、宇多田ヒカル、倉木麻衣、浜崎あゆみなどの歌を中心に活動する人たちはアーティストと言われるようになった。
 今や純粋な女性アイドル歌手はモーニング娘。や松浦亜弥などハロプロ系の人たちだけと言ってもいいだろう。
 本田さんもあと10年遅く生まれていたら最初からアーティストと呼ばれる道を歩んでいたのかもしれない。 
 女性アイドルの転換期の渦中にあった本田さんは好きな歌を歌い続けると言う道を選んだ。 
 僕は本田さんがドラマに出たり歌なしのバラエティーに出たりしてるのを見た記憶がない。少しは出たのかもしれないが印象にない。
 本田さんが女性ロックバンド「ワイルドキャッツ」を結成した時に、プリンセス・プリンセスやショウヤなどの女性バンド・ブームに便乗しようとしたと見る人も少なくなかったと思うが、本田さんにとっては歌い続けるためのチャレンジだったんだろう。菊地桃子の「ラ・ムー」とは一緒にしちゃあいけないんじゃないかねえ。
 ワイルドキャッツ解散後、ミュージカルに進出する少し前には「ミュージックフェア」で和服を着て演歌を歌ってたのを覚えている。あれは長山洋子がアイドルから演歌に転向するのと、どっちが先だったのか。ロックから演歌へというのも傍目には奇異に映ったものだが、本田さんの中ではちゃんと繋がっていたに違いない。所属事務所の高杉敬二エグゼクティブ・プロデューサーによれば、本田さんは森昌子の「越冬つばめ」が実にうまかったってねえ。聞きたかったなあ。ひゅうるりー、ひゅるりららー。
 歌を歌うことを追求し続けた結果、クラシックまで到達してしまったということなんだろう。凄いねー、凄い人だねー。
 岩谷時子さんが「越路吹雪の再来」と評したのも頷けるし、その芸域の広さは演歌にとどまらず俗曲やジャズ・ナンバーも歌いこなした美空ひばりに匹敵すると思う。
 僕が教えている大学生たちにも本田さんの生き方を大いに参考にしてもらいたいものだ。
 
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